自転車の少女

もう以前のように愛していないかもしれない。もう以前のように愛されていないかもしれない。それなのに、なかなか別れることができない。一人になるのが怖くて? 一人では寂しいから? 自分では分かっている。このままじゃ駄目になること。自転車の少女の姿に勇気づけられ車を降りました。一人で歩いていきます。

 

1番

助手席の窓からは 流れる 街並み 人の波

波は訪れ 散っていく  逆らうこともなく

自転車を 立ちこぎで 走っていく  少女

サイドミラーの中 で   小さくなっていく

夕日を背負って走る 彼女の体が燃えて

オレンジ色に染まる髪 自由に空に踊る

ペダル踏んで ドンドンと  彼女はどこへ いくのだろう

 

2番

信号は色を変え 周りの景色も止まりだす

気まずい沈黙 さけたくて    言葉を探してる

自転車の   ベル鳴らし 走ってくる    少女

サイドミラーの 中 で    大きくなっていく

落ち葉を巻き上げながら 彼女の体が飛んで

広がったスカートは 白い大きなパラソル

ペダル踏んで ドンドンと  彼女はどこまでいくのだろう

 

3番

小瓶から   漏れてくる 甘すぎる匂い キンモクセイ

無理にくちびる開いたら  乾いた声がした

自転車の 前かごで  荷物を 弾ませて

サイドミラーの脇を  すり抜けてった

風に向かう少女は   遠いあの日の私

無限に広がるキャンバスに 自由な世界を描き

ペダル踏んで 迷わずに   私は夢を 追っていた

 

 

4番

信号は 青になり  車は息を 吹き返す

波を越えろと あの 日の   私がささやいた

後ろ手にドアを閉め 夕日を背に立つと

車はためらい がち に    波に消えてった

小さく光る少女の  背中に手を振る わたし

夕暮れ時の秋空に うろこ雲が染まる

自分の足で  ドンドンと   わたしはどこへ行こうかな

 

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